新規事業の組み立てかた

新規事業を構想する時に、何を手掛かりに考えたらよいのだろうか?

前回の記事で紹介したようなバックキャスティングで目指すべき未来の姿 =「理想」から組み立てを始める人もいるだろうし、自社の現在のビジネス環境 =「現実」の分析から始める人もいるだろう。

世のなか、白か黒か、YesかNoか、そんなきれいに二分できるものではないし、実際の世界はグレーゾーンが広がっている。シンプルに右か左で色分けできた方が単純で理解しやすいけど、そんなにシンプルなモノなど現実にはほとんどない。

新規事業の構想についても同じで、理想から現実に落とし込んでいく方法もあれば、現実から理想を求めていく方法もあり、そのどちらもが必要なのだと思う。

今回は、「現在」の自分たちを分析することで、新規事業を構想する際のポイントについて紹介する。

強いビジネスモデル

要素の組み合わせ

複数の要素を組み合わせたビジネスは強い。別の言い方をすればコピーされづらい。

例えば、自社のビジネスの要素Aが「カンボジアに詳しい(カンボジアでの市場調査)」だけである場合、それがどんなにニッチな市場(カンボジア)で今は競合が少なかったとしても、同じようにカンボジアに詳しい競合がでてきたら、差別化が難しい。

これに要素Bとして「農業・食品」が加われば、カンボジアで農業・食品に関する分野が守備範囲となる。ただ、2つくらいの要素を持っていてもそれほどレアではない。

そこで、3つ目の要素Cとして、例えば「現地政府との連携(官民連携)」といった領域が加わると、カンボジア x 農業・食品 x 官民連携 といった3要素が合わさる部分が強みとなる。

このように少なくともお互いに独立した異なる要素が3つ以上組み合わさるビジネスモデルになると、競争優位もそれなりに出てくるのだと思う。この要素の数が増えれば増えるほど、よりコピーされない強固なビジネスモデルになる。

深化ではなく、新要素の追加

社内で新規事業による競争力強化をテーマに議論していたハズなのに、いつの間にか既存事業の競争力強化の方向に話が進むことがある。もちろん、既存事業の強化も大事ではあるけど、今回紹介したいのは”新”要素の追加である。

既存事業の強化の例として「カンボジアの市場調査」をしていた企業が、カンボジア中どこでも調査はできるけど、アンコールワットがある観光都市「シェムリアップ」という特定の地域での調査を売りにする、みたいなイメージだ。

こういったアプローチは、事業領域の中での深化であり、新規事業というよりも既存事業の強化であり、要素自体は同じままでコピーされやすさはそこまで変わらない。

もちろん、普段の仕事の中で、各要素の深化(強化)は必要だけど、新規事業を構想する際に考えるべき方向性は、今の自分たちにないどんな要素を新しく自分たちの強みとしていくか?という視点だ。

既存事業の分析

オーバラップの必要性

これまでに見てきたように、複数の要素を「併せ持つ」ビジネスモデルは強い。そのために、新しい事業領域が、既存の事業領域と重複する部分があることが重要となる。

既存事業が要素Aであるところに、全く関連性がない要素Bという事業を持ってきても、それぞれが独立して存在するだけで、オーバーラップして強みを発揮する部分が生まれない。

既存事業を活かせる事業領域

こういった意味で、「既存事業が活かせる」ことも重要となる。既存事業との相乗効果を狙えるけど、新しい事業領域への展開であること。新規事業に求められるのはそういったビジネスモデルの発想なのだ。

注意を払って観察する

全く新しい事業領域を考えよ、と言われると当惑する人も多いと思うが、ヒントはすでにあなた自身が目にしている可能性が高い。なぜなら、新規事業のネタは、既存事業と全く無関係なものでは無いからだ。

普段の仕事で目にしたり聞いたりする情報から、誰かが何かに困っている、というニーズに気付けるかどうかが勝負なのだと思う。結局、同じ景色を見てもそこから何を感じるか?は、ひとそれぞれ。普段から触れる情報に注意を払って分析できるか?が大切になってくる。

チャンスに気づいてからは競争

時間との勝負

ラッキーにも新規事業のアイデアに巡り合えたとしても、そこから既に競争のカウントダウンは始まっている。既にある事業をベースに新規事業を構想している以上、あなたと似た境遇の他社にも、同じ新規事業のチャンスに気付いた人がいる可能性は高い。

そこからは、いかにスタートダッシュで先に事業化できるかの勝負が始まっていると考えるべきだ。ただの思いつきではなく、実現してこそ初めて価値があるのだから。

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