2022年1月、人生で初めて海外で強制的に隔離施設に連れ去られる、というレア体験をした。果たして、カンボジアでの強制隔離はどんな生活だろうか?
今後、強制隔離されてしまう人に参考になりそうな情報を、施設への収容から、日々の生活、釈放までの流れで振り返ってみた。
帰国前PCR検査から施設収容まで
陽性判明
22年1月中旬、日本帰国に向けて、帰国前PCR検査を受診したところ、残念なことに陽性。検査所からは「家に帰るように」と伝えられる。
「ただ家にいればいいのか?」と迷いつつも、食材など籠城グッツを集める。この時点では、帰国前検査で陽性となっても保健省などから連絡はなく放置される、と聞いていたので、のんびり2週間、自宅隔離をするか、という感じで油断していた。
夜中に救急車で搬送
陽性結果を受け取った当日の夕方18時を過ぎても、やはりどこからも連絡は来ない。これは大丈夫そうだな、と油断してビールを飲みながら過ごしていると、突然、夜20時過ぎに、保健省が収容にやってくると伝えられる。
どこに連れて行かれるのか?どれくらい隔離されるのか?については明確な答えはなく、衣類やタオルを1週間分の荷物をまとめるように、と言われる。
救急車が着いたと連絡を受け、降りていくと完全防護のスタッフ2名が救急車の周りで準備をしている。この状況になったらどうしようもない。もはや、連れてかれるしかない。
隔離施設に到着
夜22時頃、隔離施設に到着。スマホのGPSで確認すると、自分のいる施設は、プノンペン中心部の西側エリア。ここは以前、別の伝染病の治療・隔離に使われていた施設で、今はコロナの治療・隔離に転用されているらしい。
自分の他にも、同じタイミングで、何名かが連れてこられていた。しばらく敷地内で待たされた後は、共同部屋に通されて、各自のベットを指定されてその日は終わり。待っていても、このあと何もなさそうなので、寝るしかない笑
隔離施設での生活
翌朝、目を覚まして宿泊棟から出てみると、自分が収容された隔離施設は、大きな幼稚園のような形をしていた。隔離患者の宿泊棟が3つ、中央に医療スタッフの常駐施設が1つ。敷地は全体的に鉄板と柵で覆われ視界が遮られて、外界から隔離、という雰囲気が伝わってくる。
同居人
自分がいた隔離部屋は、ICUと記載されており、確かに雰囲気は集中治療室(ICU)っぽい。昨晩、自分と同じタイミングでここに連れてこられたのは、パキスタン人の男性2名。自分たちより前からいたのは中国系の男性1名。
以前に聞いた話では、体育館のような大きなスペースに、ベッドがただただ並べられて集団隔離される、というなかなかハードな状況だったけど、それに比べると、薄いカーテンとはいえ間仕切りがあって、各スペースはそれなりに離れている。もちろん声や生活音はまる聞こえだ。
とりあえず、最悪の想定よりもだいぶよい状態だ、と思うことにした笑
ここら辺は気の持ちようが大事。
1日のスケジュール
1日のサイクルはとても単調だ。☆マークをつけた食事の配給以外、特に何かの時間が決まっているわけではない。一旦、入所となってしまったら、いかにして精神的にも肉体的にもダメージ少なく時間を過ごせるか、サイクルをそれぞれが見出すしかないのだと思う。自分の場合、単調な生活の方が、淡々と時間が過ぎていくので、ほぼこのルティーンどおりに過ごしていた。
シャワーに関しては、ユニットバス1つをみんなで共用していたので、なるべく他の人と被らない時間帯にしていた。洗濯もタライで手洗いするしかないため、シャワーと一緒に洗濯もして、日中に干すことができるように午後イチの時間帯でシャワーと洗濯をルーティンにしていた。
6時 起床
7時 ☆朝食の配給
12時 ☆昼食の配給
14時 シャワーと洗濯
17時 ☆夕食の配給
22時 就寝
食事
食事は全てこちらの地元のクメール料理。メニューは毎回変わるし、味は好みにもよるが食べられるレベル。ただし、好き嫌いが多めの人なら、コメに振りかけて食べることができるフリカケ持参がよさげ。
なお、ペットボトルの水は、常にストックが補充されて飲み放題。
朝食
朝食としては、炒め系や、スープ系などの麺類が多い。個人的には炒め系の麺の朝食は好きだった。
昼食・夕食
昼と夜は、弁当箱サイズのコメ、炒め物、スープの3つがベース。果物などのデザートが付いてくることもある。
個人的には、スープは、漬物のようなしょっぱい&酸味系の味付けが多くて苦手なものが多かった。とはいえ、炒め物とスープの両方がハズレということはほぼないので、どちらかでコメを食べれば問題ない。
出所までのプロセス
入所してから最初の数日は、血液採取や胸部X線など健康診断的な作業が行われるけど、それ以降は、特に何もなく時間だけが過ぎていく。
隔離された人はみな、「自分がいつ釈放されるか?」が一番気になる。ただ、これもなかなか医療スタッフが日本みたいに明確に答えてはくれないので悩ましい。
自分が収容されたケースでは;
- 検体採取日の翌日を1日目として数えて、7日目の朝に検体(鼻腔と喉)を採取
- 8日目に、前日採取したPCRの結果が判明(ただし結果は自分から聞かないと教えてくれない)
- 1回目の検査が陰性だった場合、48時間を開けて、9日目の朝に2回目の検体を採取
- 10日目の朝、2回目の検査結果が陰性だった場合は、医療スタッフから今日、退所できるので準備をするように言われ、2時間ほどして書類?が準備できると、午前中に施設から釈放
強制隔離に備える!
誰も強制的に施設に隔離されたいなんて思わないけれど、もし、隔離されそうになってしまった場合、何を準備したらよいのだろうか?今回は、実際に隔離施設で過ごしてみて、あってよかったな、と思うものをリストアップした。
事前準備
保険
特に帰国しようとしたタイミングで陽性&隔離されて分かったことは、入国時に用意する保険(Forteやそれ以外の海外旅行保険)の有効期間が、帰国するタイミングとギリギリに設定していると、コロナで陽性となってしまった場合、隔離中に保険が切れてしまうケースもありそうだ。
陽性となってしまうと、最短でも10日、長ければ1ヶ月近くも滞在期間が伸びてしまうので、保険については、ゆとりをもって長めに加入しておくのがオススメ。
隔離セット
隔離は夜中だろうと突然やってくる。陽性となってしまった場合には、ひとまず最低限必要なものを、バックに詰めて準備しておくのがよいと思う。
必須アイテム
- スマホと充電器(必要に応じてトップアップ用のスクラッチカードも)
- イヤホン
- パスポート(原本でなくとも、スマホの画像データで問題なし)
- Forte保険(画像データ)
- マスク(多め)
- 歯ブラシ、歯磨き粉、綿棒
- 石鹸、シャンプー
- 虫除けスプレー、痒み止め
- タオル
人によっては持っていくのがおすすめ
- ふりかけ
- PC(ただし共同部屋のため、不安なら持っていかないのもアリ。自分は持っていかなかった)
差入れ
現在のところ、外部からの「差入れ」はOK。何か足りなくて困った場合には、知り合いにお願いして持ってきてもらうのもアリ。その他、施設のスタッフにお願いしたら(頼み方の上手下手や、相手次第ではあるけど)対応してくれる場合もありそう。知り合いがいない、すぐにこれない、といった場合には、施設スタッフと仲良くなってお願いしてみよう。
晴れて釈放、そして
釈放証明書
2回目のPCR検査の結果、陰性となると、釈放証明書(Discharge Card)という書類を渡されて、無事に施設からでることができる。
基本的にForte保険に加入していれば滞在中お金は一切かからない。しかし、施設を出た後は、ホテルなどに自力で移動する必要がある。
隔離生活を振り返ってみて
10日間の施設での隔離生活を振り返ってみると、モルヌピラビル(おそらくw)などの治療薬や、医療スタッフによるケアも受けられるし、生活環境も、一時、噂で聞いてたほど劣悪ではないので、カンボジアのコロナ体制もだいぶこなれてきたのだと思う。
もちろん、自分から望んで強制隔離施設に入りたいとは決して思わないけど、実際に、強制隔離を体験してみて、カンボジアの医療体制はだいぶしっかりしているんだな、と感じたのは率直な気持ち。
なので、万が一、強制隔離に招待されてしまった場合には、そんなに不安になったりせずに、流れに身を委ねてみるのもありかも、というのが一番役に立ちそうなアドバイスなのかもしれない笑
再び帰国前PCR検査
この釈放証明書は、帰国前PCRとは違う。そこで、予約しなおしたフライトに合わせて、改めて帰国前PCR検査を申し込む必要がある。
自分は、治療を受けて、無罪放免?となったと信じていんたので、そのまますぐに日本に帰国できると信じていた。
しかし、まさかの、延長戦に突入。。。
その後の経緯については、後日、別の記事で紹介する。