バングラデシュ人材を活用する!技術労働者の供給国としての可能性

日本国内の人材不足が深刻化する中、労働力の担い手として外国人人材の活用も選択肢となっています。そして、外国人に求められるスキルも多様化しています。

職種によっては、単純労働が中心で、関連する分野の経験や知識などは不要といったニーズもある一方、特定の職種に特化した経験や知識を必要とする分野もあります。

今回は、後者の「スキルを持った人材:技術労働者」の供給国として、バングラデシュの可能性を現地の職業教育をテーマにご紹介します。

バングラデシュの労働力

バングラデシュは、インドとミャンマーの中間に位置し、日本を上回る1億6千万人を抱える南アジアの国です。

労働市場の概況

経済成長の一方で、高い失業率

東南アジアの新興国と同様に、バングラデシュも過去10年以上にわたって年7%の経済成長を続けています。他方で、国内の失業率は、2005年(4.3%)に対し2017年(4.0%)と高い水準で推移しています。特に、新しく労働市場に入ってくる若年層を中心に、雇用の確保が大きな課題となっています。

海外就労

バングラデシュ国内で仕事がないことを理由に、海外での就労が主要な選択肢となっており、毎年60~70万人が海外に出稼ぎにでています。累計ベースの海外居住者の人数も、1位:インド(1,700万人)、2位:メキシコ(1,300万人)、3位:ロシア(1,100万人)、4位:中国(1,000万人)に次ぐ5位:バングラデシュ(750万人)であり、多くのバングラデシュ人が国外で暮らしています。

この海外就労者の多さに加え、バングラデシュの特徴として、技術労働者に分類される職業専門高校以上の資格を保有する人が、海外で職を求める割合が高いことが挙げられます。60~70万人の出稼ぎ労働者のうち、32%にあたる約20万人強がこういった技術者としての教育を受けた人材と言われています。

職業教育

バングラデシュの教育政策は、職業教育を重視している点が特徴となっています。

専門高校での職業教育

高校卒業資格に相当するHigher Secondary Certificate(HSC)については、2018年には129万人が受験し、86万人(67%)が合格しています。このうち、専門的な技能(Technical and Vocational)のHSC合格者は8万9千人(受験者は11万8 千人)もいます。

比較対象として日本のケースでは、高校卒業者が約107万人(2017年)であり、総数ではバングラデシュを上回っています。しかし、特定の職業に特化した高等専門学校の卒業生は1万人(2017年)であり、職業教育といった観点から、バングラデシュが日本と比較しても多くの人材を供給している、といった点は注目に値します。

バングラデシュ人材の来日の手段

このように海外就労が活発で、かつ、職業教育を受けた人材を多数輩出しているバングラデシュですが、日本との関係ではどのような方法で来日する人が多いのでしょうか?

留学ビザから就労ビザへの切り替え

バングラデシュ人が日本にやってくる手段の一つは、留学ビザによる来日です。2018年には3,640人のバングラデシュ人留学生がおり、前年度の2,748人から約900人の純増となっています。

留学ビザで来日する人材の多くは、学校で勉強した後に就労ビザ「技術・人文知識・国際業務」を目指していると言われています。

JICAが実施している「B-JET:日本市場向けバングラデシュITエンジニア育成プログラム」でも、留学ビザで来日し、企業インターンを通じて、就労ビザによる日本での就労、といった仕組みを提供しています。

技能実習

正確には、実習生であり就労ではありませんが、技能実習生として来日する選択肢もあります。バングラデシュとの間では、2018年1月に日本政府とバングラデシュ政府の間で覚書(MOU)が締結され、技能実習生の受入れが本格的にスタートしています。

特定技能

2019年8月には日本政府とバングラデシュ政府の間で特定技能に関してもMOUが締結され、今後、特定技能を経由した人材の受け入れも開始されます。

バングラデシュ人材の活用

増える外国人人材へのニーズ

たびたびニュースでも取り上げられているように、日本における労働力不足は急務の課題となっています。

1995年にピークを向かえた生産年齢人口(15~64才)8,717万人に対して、2019年は7,545万人と、1,200万人もの労働力を失っています。これらの失われた労働力を補てんするために、海外から労働力を受け入れることは避けられない状況です。

2018年末時点の在留外国人は、273万人に上ります。主な内訳は:

  • 永住者  77万人
  • 留学 34万人
  • 技能実習 33万人
  • 特別永住者 32万人
  • 就労ビザ 23万人

出典:法務省「平成30年末現在における在留外国人数について」

となっています。

特に、技能実習と就労ビザの2つが前年比20%近くの高い伸び率となっています。

今後ますます増加する外国人労働力の供給元として、高いスキルをもった人材を輩出しているバングラデシュは、魅力的な選択肢の一つになると考えています。

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